チー牛アイドル

アイドル多田李衣菜のお気に入りは3種のとろーりチーズ牛丼。

 

これは家族も、友達も、プロデューサーも、ファンも、ミミズだって オケラだって、アメンボだって、ロックの神様だって、みんな みんな知っていること。

 

現場のケータリングも、いつもチーズ牛丼だし、なんなら、そのあとのプライベートでもすき家を訪れる。

 

そして、いつからか、彼女のロックアイドルとしてのアイデンティティは失われ、代わりに世間からはチー牛系アイドルとして認知されるようになった。

 

チー牛の仕事をこなし、チズ牛代を稼ぎ、チズ牛を食べる毎日。

 

彼女は自著「チズ牛ロック論」を出版するまでになった。

 

以下、抜粋

 

「チー牛がロックだっていうのは当たり前で、その逆で、ロックってチズ牛だなって思えるようにならないといけないんですよ(2020, 多田, "チズ牛ロック論", 87p.)」

 

 

 

そんな最中である、チー牛顔と呼ばれる例の画像が一大ミームとなってしまったのは…

 

気持ちの悪いオタク顔がチー牛を頼む姿に、産まれたての赤子でさえ「キモ」と発音したという。。。

 

チー牛の権威は地に落ち、売り上げは激減。チズ牛業界に激震が走った。

 

チー牛=ロックの図式も無残に崩れ去り、とってかわったのはチー牛=キモ。

 

当然、チー牛系アイドルこと多田李衣菜もイメージダウンを余儀なくされる。

 

全国のすき家を慰問していた多田はのちにこう語っている。

 

 

「あの時は、本当につらかった。半分は意地だった。」と。

 

辛い戦いは長く続き、多田は疲弊していた。

ろくにチー牛の食べられない毎日、いつしか、チー牛が何なのか、彼女にはわからなくなっていた。

 

朦朧とする意識の中、慣れ親しんだ牛丼屋チェーンに入る。

なにかが足りない。なにかが足りない気がするけど、なんだろう。

よくわからない。もうすべて投げ出してしまいたい。

 

「あれ、こんなところで何してるにゃ?」

 

慣れ親しんだ声、

 

「それにしても。李衣菜ちゃんが松屋にいるなんて珍しいにゃ。」

 

え、なんて?今、なんて?

 

松屋っ!!!!!????????????」

 

「チーズ牛丼ないやんけ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶叫。